法務省|法務大臣閣議後記者会見の概要【令和5年6月20日(火)】

令和5年6月20日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件として主意書に対する答弁書が2件ありました。

今国会の法務省提出法案の審議についての所感に関する質疑について

【記者】
 通常国会が明日21日に閉会します。法務省の提出法案では、改正刑法、それから改正入管難民法など、九つの法案が可決されました。今国会の審議を通じまして審議の内容を大臣、どのようにお感じになっているか、所感をお尋ねします。

【大臣】
 今回におきましては、9件の法務省関連法案などについて、長時間にわたり、熱心に御審議をいただき、提出した法案全てについて、成立をさせていただきました。現時点で今国会における衆議院と参議院の法務委員会の開催回数は、合計43回でありまして、その審議時間は合計145時間ほどでありました。これは昨年の通常国会の法務委員会よりも、審議時間では57時間ほど長かったとのことであります。今回成立させていただいた法律はいずれも重要なものであり、国会の過程でも様々な御議論いただき、法案の修正や附帯決議もありました。それらをしっかり踏まえて適切に対応していきたいというふうに思っています。さはさりながら、2週間ほど後にG7が迫ってまいりました。この日ASEAN特別法務大臣会合、G7司法大臣会合、ASEAN・G7法務大臣特別対話、これは、ロシアによるウクライナの侵略という極めて深刻な状況の中で、法の支配による国際秩序の維持をしっかり図っていかなくてはならないという意味で、大変重要な会議になっていますので、その準備に今頭がいっぱいであるということであります。

法制審議会区分所有法制部会に関する質疑について

【記者】
 先日、法制審議会から区分所有法制の見直しについて、中間試案が公表されました。今後、審議会で更に議論が続けられますが、背景にある課題について、大臣はどのようにとらえていらっしゃるのか伺います。

【大臣】
 高経年の区分所有建物の増加、それから区分所有者の高齢化、こういったものを背景に区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化が進行しています。そのために区分所有建物の管理に関する意思決定に必要な賛成を得ることが難しくなってきておりまして、5分の4の賛成が必要な建替え決議等につきましては、必要な賛成を得ることが特に困難になっていることから、区分所有建物の管理不全化や再生の困難化、そういった課題が生じているということ。これはなかなか深刻な問題だというふうに認識しています。法制審議会区分所有法制部会におきましては民事基本法制の観点から、区分所有建物の管理・再生の円滑化を図る方策等について検討が進められてきております。今月の8日には集会の決議の円滑化や建替え決議の要件緩和などを内容とする中間試案が取りまとめられたところでありまして、今後、パブリックコメントの手続に付して、国民各層の幅広い意見を募るという段取りになっています。他方で、先ほど述べた課題につきましては、民事基本法制の観点だけではなく、例えば、適切な管理水準への誘導ですとか、建替えに当たっての合意形成の促進など住宅政策の観点も含めて、関係省庁が連携して取り組む必要があるというふうに考えています。法務省としては区分所有建物をめぐる諸課題の解決に向けて、引き続き関係省庁と連携しつつ、スピード感を持って取り組んでいきたいと考えています。

改正刑法等に関する質疑について

【記者】
 今国会の法案の中の性犯罪の規定の見直しの刑法改正等について2点伺います。まず、前の会見でもお伺いしたのですけれども、今回、不同意性交等罪ということで、不同意というのが前面に出て、被害者団体の方は非常に成立を待望していたという面があります。改めて成立した改正法の意味するところ、同意を得る得ない、不同意の性行為が犯罪だっていうのが明確化したと思うのですけども、そのあたりのメッセージを大臣にお願いしたいのと、新法の方で附帯決議の中でいわゆるアスリートのユニフォーム姿、例えば上から盗撮するとか、そういった点は今回規制の対象ではなくて、今後規制を検討するということが附帯決議にも盛り込まれました。このあたりは課題として残ると思うのですけれども、今後の検討に関して大臣のお考えをお願いします。

【大臣】
 この度成立させていただいた性犯罪に関する二つの法律は、重要なポイントを申し上げると、いずれも性犯罪の被害の実態を踏まえて、事案の実態に即した対処ができるようにするため、法整備を行ったということであります。そこが大きなポイントで、私はこの点、大きな前進があったのではないかなというふうに考えています。御案内のように性犯罪は被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けるものであって、決して許されるものではありません。こうした性犯罪への適切な対処は、喫緊の課題でありまして、そのための法整備を行うこれらの法律は、私は大変重要な意義を有すると考えています。今後、この改正の趣旨、内容について関係府省庁、機関、あるいは団体との連携をして、十分な周知を図ることが重要であります。適切な運用がなされるよう施行に向けた準備を進めていきたいと考えています。
 また、アスリートの件につきましては、今回は、御指摘のようなアスリートの下着ではない状態、これを撮影することを性的姿態等撮影罪の対象としていません。これにつきましては通常他人に見られる着衣の上から撮影する行為は、性的姿態等撮影罪の保護法益を侵害するとは必ずしもいえないのではないかということですとか、具体的に何をどの程度まで強調して撮影すれば構成要件に該当するかについて、なかなか法文上明確に規定することが難しいという理由があったわけであります。もっとも、御指摘のような姿態を撮影することが社会問題となっていることは、重々承知をしているわけでありますので、御指摘のようにこの点に関しては衆議院における審議の結果、附則が修正されて、政府において施行後5年を経過した場合に検討を行うこと等が定められるということと、附帯決議におきまして性的姿態等以外の人の姿態や衣服で覆われた部位を性的な意図を持って撮影する行為等を規制することについて検討を行う。これが求められているわけでありますので、法務省といたしましては、これらの趣旨を踏まえて、本法律案が成立しましたので、関係府省庁と連携して適切に対応していきたいというふうに考えています。

出入国在留管理行政に関する質疑について

【記者】
 改定入管法では補完的保護対象者の保護規定ができました。しかし、人道的配慮による在留特別許可の条項に関しては削除されています。現在よりも保護の範囲が狭まるおそれというものも指摘されていますが、改定入管法における補完的保護規定の追加、及び人道的配慮による在留特別許可の条項削除によりこれまでの保護される対象が増えるのか、狭まるのか予測シミュレーションを行ったことはありますでしょうか。ありましたらその内容をお知らせください。行っていない場合は、これほど重大な変更による現実的な影響を軽視しているのではないかと思われますが、なぜ行わないのか、今後実施の予定があるのかお知らせください。

【大臣】
 大変重要な点を指摘していただきました。この件は国会でも答弁させていただいているのですが、入管法改正法では、紛争避難民等の人道上、真に庇護すべき方々をより確実かつ早期に保護すべく、難民条約上の難民に該当しない場合であっても、難民条約上の五つの理由以外の理由により迫害を受けるおそれのある者を補完的保護対象者として認定する制度を創設する。これにより、現行法下で人道的配慮に在留特別許可を受けていた者に対して、補完的保護対象者と認定されれば、当然、制度的、安定的に支援を行うことが可能となります。また改正法下では補完的保護対象者と認められない者でありましても、退去強制手続において申請、あるいは、職権により、在留特別許可の判断を受けるということが可能となっているわけであります。したがいまして、現行法下で人道配慮による在留特別許可により、保護されていた者の保護の範囲が狭くなるということはありません。これは国会でも明確に答弁をさせていただいているところであります。

【記者】
 シミュレーションは行っていない。

【大臣】
 変わらないのでシミュレーションはやる必要がないということだと思います。

【記者】
 やる必要はない。

【大臣】
 今答弁で申し上げたように、現行法下で人道配慮による在留特別許可により保護されていた者の範囲が狭くなることはありませんので。

【記者】
 在留特別許可の話なんですけれども、退去強制令書が発付されている18歳未満のこどもたちの話なんですが、これについてはこれから少しお時間に余裕ができるということで、これから本格的に検討を始められるとこだと思うのですけども。これに関しては、18歳未満のこどもだけではなくて18歳以上の人たち、例えば19歳、20歳、21歳、高校卒業した、あるいは大学4年生とかですね、この方たちは親に連れられて日本で生まれ育ったということ、それで、自分は、育ってきた環境には、客観的には責任がないというこどもたちが多いんですよね。この子たちも就職活動、友達はみんな就職しているわけですよね、高校卒業したら、大学4年生になったら、就職活動、みんなしていると、スーツを着てね。でも自分はこれができないんだっていう状況はある意味、非常に苦しい立場にいる人たちがいるんですけれども、この方たちについては、どういうふうに対応されるか。方向性などをお示しいただければと思いますけれども。

【大臣】
 18歳を超えるケースのお話だと思うのですけれど、今回の法改正では、在留特別許可の判断の透明性、これを高めようということで、新たに考慮事情を法律で明示しております。判断に当たっては、御指摘のような児童の最善の利益、これについても法律で明示された考慮事情のうち、家族関係、又は人道上の配慮の必要性として当然考慮の範囲に入ってまいります。したがいまして、一つ一つ個別の事情を勘案する必要はありますけれども、それぞれの考慮事情の具体的な考え方を運用上のガイドラインとして策定することによりまして、こういった外国人の方のうち、どのような方が我が国に受け入れられるかについて、しっかり示すということを検討しているということであります。

【記者】
 在留特別許可のガイドラインと今おっしゃった新たな基準というものは同じものなんでしょうか、違うものなんでしょうか。
 それともう一つ、私が質問したかったのは、この間、色んな場で、大臣はこの5年間の間に行政訴訟が109件提起されていてそのうち104件が国の主張が認められているっていうのを繰り返し御発言になっています。これは多分、難民不認定処分取消訴訟の地裁と高裁判決の合計の数ということだと思うんですが、それでいいんでしょうか。
 それで、難民申請者にとって、行政訴訟のハードルが高いっていうのは誰でも知っていることです。日本には、そういった人権侵害を調査したり是正するための政府から独立した国内人権機関が存在しませんし、司法判断の後に、国連機関とかに訴えることができる個人通報制度にも、日本政府は一つも加入していません。そういう事情があるんですけれども、こういった人権保障システムが、国際人権基準から非常に立ちおくれている状況の中で、行政訴訟で、国の勝訴が多いということをそういうふうに強調することが本当にできるのかどうかと、その辺の大臣の御見解、特に国内人権機関の設置とか、その個人通報制度の加入を、なぜ日本政府はかたくなに拒み続けているのか、大臣の所見をお願いいたします。

【大臣】
 最初の御質問は、先ほどの御答弁と繰り返しになってしまうのですけれど、この改正法で在留特別許可の判断の透明性を高めようということで、新たに考慮事情を法律で明示しています。御指摘の児童の最善の利益につきましても、法律で明示された考慮事情のうち、当然、家族関係ですとか、あるいは人道上の配慮の必要性というもので考慮されることになるのです。考慮事情の中に入っているということであります。そしてそれぞれの考慮事情の具体的考え方というものをガイドラインとして策定をするということにしておりますので、そのガイドラインによって透明性を高めていきたいということであります。これが一つ目の御質問です。
 二つ目の訴訟のカウントの仕方につきましては、難民不認定処分の適否が争われた国が被告になった行政訴訟において、平成30年から令和4年の過去5年間で109件中104件で国が勝訴しているという事実関係、この訴訟には、難民不認定処分の取消訴訟と無効確認訴訟を含んでいます。この件数につきましては、基本的に当該訴訟の原告1人について、地裁の判決を基準に1件として計上しています。そして国側が高裁で逆転勝訴した訴訟及び国側が高裁で敗訴した訴訟については、高裁の判決を基準に1件として計上しています。地裁の後の判断を重視していることになります。そうして一つの訴訟について、二重に件数が計上されることのないようにカウントしているということであります。
 それから国内人権機関と個人通報制度のお話ですが、この件につきましては、日弁連も決議をされているということは承知しています。人権救済制度の在り方につきましては、これまでなされてきた議論がありまして、そういう状況を踏まえて、不断に検討しています。いずれにしても、差別のない社会の実現を目指して、個別法によるきめ細かな人権救済を推進してまいりたいというのが、今の日本政府の立場であります。なお、個人通報制度の受入れについて、条約等の締結を所掌する外務省において、関係府省庁と連携し、所要の検討が行われているものと我々は承知をしています。個人通報制度を受け入れていない理由につきましては、外務省の話ですけれど、外務省の検討に必要な協力は我々としては引き続き行っていきたいというふうに考えています。

【記者】
 技能実習制度の関連です。先日の関係閣僚会議、9日ですけども改訂された総合的対応策では、現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消して、新たな制度を創設すると記載されておりましたけれども、有識者会議の中間報告では、技能実習制度を廃止してというふうになっていたと思います。文言上は廃止から発展的に解消に変わりましたけれども、中間報告を受け政府は、技能実習制度を意味とすれば廃止するということに、そういった方針に変わりないということかどうか、そうでないとすれば、それでは有識者会議の提言、中間報告書を軽視することにはならないかというふうに思うのですが、大臣の御所見をお伺いしたいのと、発展的解消ということに政府として変更したのであればその理由についてもお聞かせください。

【大臣】
 これも大事な御指摘だと思います。技能実習制度の廃止という表現につきましては、4月10日の有識者会議において中間報告書のたたき台が提示されてから、現行の技能実習制度は、もうすぐやめちゃうのかという御指摘など様々な反応がありました。もっとも、中間報告書ではこういう表現がありまして、「技能実習制度が人材育成に加え、事実上、人材確保の点において機能していることを直視し、このような実態に即した制度に抜本的に見直す必要がある。」と、こういう表現が中にありまして、先ほど申し上げたような即刻取りやめるのかといった指摘は、この中間報告書の意図するものではないというふうに考えるわけであります。そこで、制度を実態に合わせて抜本的に見直すという趣旨が、より誤解なく伝わるようにするために、現行の技能実習制度の実態に即して発展的に解消という表現とされたもの、そういう考えでこの表現が使われるようになったということでございます。

(以上)



出典:法務省 Webサイト
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00422.html