厚生労働省|【「2020年代のうち」に最賃1500円】福岡大臣会見概要(令和6年10月2日(水)14:31~14:46 省内会見室)
会見の詳細
質疑
記者:
まずはご就任おめでとうございます。1点質問させていただきます。来年度の年金制度改正について伺います。7月の財政検証では、経済成長がこれまでと横ばいの場合、2057年の所得代替率は今より2割低下するものの、政府が約束する50%以上は維持できるとされました。少子高齢化によって公的年金の給付水準は徐々に引き下げられていて、現役世代からは不安の声も聞かれます。大臣としては年金制度の現状をどのように捉え、次期年金制度改正にどう取り組んでいくのかお考えをお聞かせください。
大臣:
7月に公表されました令和6年財政検証においては、女性や高齢者の労働参加の進展、そして好調な積立金の運用を背景に、前回に比べて将来の給付水準の改善が確認されたところです。加えて、今回新たに実施した分布推計では、若年世代ほど厚生年金期間が延伸し、年金額の増加へ寄与することも確認されています。現在、こうした財政検証の結果も踏まえ、制度改正に向けて、1つは被用者保険の適用拡大などを通じた働き方に中立的な制度の構築、そしてもう1つは所得保障・再分配機能の強化を図る観点から、基礎年金の給付水準の確保といった方向で検討を進めているところです。年末の社会保障審議会年金部会における取りまとめに向け、与党とも相談しながら丁寧に議論を進めていきたいと考えています。
記者:
就任おめでとうございます。最低賃金と賃上げについて伺います。これまで政府は最低賃金を2030年代半ばまでに全国平均1,500円にするとの目標を掲げてきましたが、今般就任された石破首相は昨日の記者会見でも、1,500円の達成時期について「2020年代のうち」ということで、早めると表明されています。厚生労働大臣として、石破首相の最低賃金の新たな目標についてどのように考えていらっしゃるのか、現時点のお考えをお聞かせください。また、近年は民間企業でも大幅な賃上げが相次いでいますが、こうした動きを今後持続していくために、政府としてどのようなことに重点的に取り組んでいくのかについてもあわせてお答えください。
大臣:
豊かさを実感できる所得増加を実現し、物価上昇を上回る賃上げを定着させるためには、賃上げ支援を強力に推進していくことが重要であると考えています。今ご指摘がありました最低賃金については、最低賃金法に基づき労働者の生計費や賃金等のデータに基づいて、公労使三者で構成する最低賃金審議会で議論し決定するものであり、今回の総理からのご指示を受け、最低賃金の引上げの議論を加速してまいりたいと思っています。また、最低賃金審議会の円滑な運営を図りつつ、関係大臣と連携し、最大限の価格転嫁や生産性向上の支援等により中小企業等が賃上げできる環境整備にも取り組んでいきたいと考えています。
記者:
長崎の被爆体験者について2点お伺いします。岸田前首相は9月21日、長崎の被爆体験者について、被爆者と同等の医療費助成を行うと発表されました。年内のできるだけ早い時期に医療費の助成を提供するため、新たな事業の詳細設計については、長崎県、長崎市と詰めていくと述べられていましたが、両自治体との調整の進捗とともに、事業開始の目途についてお伺いします。一方で、被爆体験者の方々が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の長崎地裁判決については、国の意向を踏まえて長崎県、市は控訴され、原告も同様に控訴されました。審理は福岡高裁に移ることになりますが、原告の方々は高齢化が進み、その中で一貫して被爆者認定を求めています。これらを踏まえ、被爆体験者の問題にどのような姿勢で大臣は臨まれていくのか、お考えをお聞かせください。
大臣:
今おっしゃられましたように、長崎地裁判決への対応については、判決を精査した結果、政府としては司法判断の根拠に対する考え方が最高裁で確定した先行訴訟と今回の判決で異なるなどの理由から、控訴せざるを得ないと考えたところです。また、長崎の被爆体験者への方々への医療費助成については、年内のできるだけ早い時期の医療費から助成を適用することとし、現在、おっしゃったように、長崎県・長崎市と実務的な調整を進めているところです。厚生労働省としては、被爆体験者の問題については、今お話しもあったように平均年齢も85歳を超えていらっしゃいます。多くの方が身体的健康度の低下に伴う様々な疾病を抱えて長期療養を要している状況にもあられることから、合理的な判断として、今般の訴訟の原告であるかどうかに関わりなく、これまで被爆体験者とされてきた方々全員を対象として幅広い一般的な疾病について被爆者と同等の医療費助成を行う事業を創設することとしたものであり、まずは早期の事業開始に向けて、長崎県・長崎市との調整を進めてまいりたいと考えています。
記者:
自民党の総裁選では、小泉候補を中心に解雇規制の見直しが論点となりました。現時点で見直すお考えがあるかどうか、もし見直す場合には検討の進め方も含め、大臣のお考えを聞かせてください。
大臣:
今回の総裁選の中で、整理解雇に係るいわゆる4要件の見直しに関する問題提起があったところですが、整理解雇については企業が人員削減のために行うものであり、労働者側に責任がないこと等を踏まえて裁判例が積み重ねられ、できあがってきたものと承知しています。解雇規制の在り方については、多くの労働者が賃金によって生計を立てておられること等を踏まえ、企業の雇用慣行や人事労務管理の在り方、裁判例の傾向ともあわせ、労使間で十分に議論が尽くされるべき問題であると考えており、現時点においては整理解雇に係る見直しは考えていません。なお、労働市場改革の必要性については総裁選でも議論があったところであり、今後見込まれる厳しい人手不足社会において多様な人材ニーズを充足していくためには、労働者が主体的に安心して様々な挑戦ができる労働市場とセーフティネットを整え、多様な労働参加を得ながらそれぞれの能力発揮を効果的に促していくことが必要不可欠と考えています。
記者:
健康保険証の廃止とマイナ保険証への移行について2点お伺いします。石破首相は総裁選にあたり、12月2日としている健康保険証の廃止期限について、国民の不利益や不安が解消されない場合に、時期を見直す可能性もあり得るとのお考えを示していました。福岡大臣の下、健康保険証の廃止を予定通り12月に行うのか、時期を見直す可能性があり得るのか、お考えをお聞かせください。
大臣:
まず言うまでもありませんが、マイナ保険証は、患者本人の健康・医療情報に基づくより良い医療の提供を可能にするほか、救急時の活用を含め、適切な医療の提供に大きく寄与するものだと考えています。その利用促進を図っていくことが極めて重要であると考えており、12月2日に保険証の新規発行を停止する方針については堅持したいと考えています。一方で、総裁選でも議論にありましたように、マイナ保険証が使えずに困っている方などの様々な不安の声も寄せられていることもあると承知しています。まずはマイナ保険証への移行で不利益を感じる方がないように、当面、デジタルとアナログの併用を含めて様々な対応を丁寧に講じていく必要があると考えており、マイナ保険証へのスムーズな移行が図られるよう対応に万全を尽くしていきたいと考えています。
記者:
保険証の廃止を決定するに至った大臣間の協議や首相への報告についてですが、弊社のこれまでの取材で記録がないことがわかりました。保険証の廃止という国民に大きな影響を与える政策決定のプロセスが不透明な状態となっています。このままで国民への説明責任は果たせるのか、国民の納得と共感を得て政策を進めるためにどのような対応を取るべきだとお考えかお聞かせください。
大臣:
現行の保険証の新規発行の終了の方針については、政府全体としてマイナンバーカードの普及や国民の利便性向上に向けた対応を総合的に取り組む中で、最終的に、令和4年10月13日に関係閣僚と方針を確認の上、デジタル大臣から発表されたものです。また、マイナンバーカードと保険証の一体化については、医療を受ける国民、医療を提供する医療関係者などの理解が得られるよう、丁寧に取り組む必要があるため、「マイナンバーカードと保険証利用の一体化に関する検討会」を開催し、必要な検討を行った上で、関連法案を令和5年の通常国会に提出し、慎重にご審議の上、可決・成立をしていただいたところです。様々な広報手段を通じて、国民の皆様に対して丁寧にわかりやすい説明に努めてきたところですが、引き続き丁寧な説明を行っていくよう努めてまいりたいと考えています。
記者:
福岡大臣は、党では厚労部会長あるいは社会保障制度調査会の役員として医薬品政策でも中心的な役割を果たしてきましたが、厚労大臣としてドラッグ・ラグ、ロス対策への意気込みをお願いいたします。
大臣:
今お話しがありましたように、海外で承認されている医薬品について日本での開発が遅れている、いわゆる「ドラッグ・ラグ」の問題、そして、日本で開発もされていない「ドラッグ・ロス」の問題というものは、極めて深刻な問題であると認識しています。この解消のためには、まず医薬品の研究開発から薬事承認までのプロセス、そして薬価の評価まで、各段階で見直しを行っていく必要があると考えており、日本向けの医薬品開発を促進する観点から、海外で臨床開発が先行した国際共同治験開始前の日本人第1相試験を原則として不要とする見直しなどを行ってきたところです。また、「ドラッグ・ラグ」・「ドラッグ・ロス」を解消するためには、創薬におけるイノベーションを推進することも極めて大事だと思っており、環境整備にも努めていく必要があると考えています。医薬品産業を成長産業の1つとして捉え、我が国の今後の成長を担う基幹産業の1つとしていくためにも、製薬企業、そしてアカデミア、政府等が相互に協力して創薬に取り組む「エコシステム」の構築を進めていきたいと考えています。
記者:
昨夜、石破総理から、「将来の不安に対応するために、医療、年金、社会保障などは今の時代にあっているのか、見直しに着手する」という発言がありましたが、こちらについての受け止めや、今後見直しをどのように進められるか、お考えをお願いします。
大臣:
まず、石破総理が昨日の会見でもそのような方向性を示されました。厚生労働省としても、様々な社会保障の改革工程表に則って様々な改革を進めていくというようなことにしておりますが、今回の総理の趣旨も踏まえ、どのような対応を行っていくかということについては、さらに検討を進めていきたいと考えています。
(了)
出典:厚生労働省 Webサイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00739.html