法務省|法務大臣閣議後記者会見の概要【令和5年12月22日(金)】
令和5年12月22日(金)
今朝の閣議で、法務省案件としては、質問主意書に対する答弁書の決定が7件ありました。
私から、続けて2点御報告させてください。
1点目は、本日の午後、法務省の中で「第73回“社会を明るくする運動”」作文コンテスト法務大臣賞表彰式が行われます。全国の小・中学生の皆さんに、犯罪や非行のない明るい社会を作るというようなテーマで作文を募集させていただいて、その中の優秀作品について、今日表彰を行います。本年も、30万点以上の作文が寄せられました。書いてくださった小・中学生全員を表彰したいぐらいですけれども、しっかりとその中で自分の主張を述べておられるお二人の方が最優秀賞として法務大臣賞表彰となります。小学生の部では、山梨県の高梨詩楠さんという小学生の方であります。この方の作文のタイトルは、「家族を再生する『読み聞かせ』の力」であります。瑞々しい感性、深い洞察力を感じさせてくれる作文であります。中学生の部は、鹿児島県の角川凜さんという中学生の方でありまして、この方の作文のタイトルは、「明るい社会にするために」。御自身が読んだ本の感想を織り交ぜながら深い洞察をされております。こういった方々だけではなく、(約)30万人の小・中学生がいっとき社会の在り方に思いをはせてくれるというのは有り難いことだし、心強いことだなと強く感じるところです。それが1点目の御報告(です)。
2点目は、世界にいらっしゃる日系四世の方を5年間受け入れようという制度があります。ただ、まだなかなか大勢の方に利用していただけるところまでいっていないので、関係団体の御要望も踏まえて、一部要件の緩和を行います。(早ければ)12月28日(木)から、もうそれを実施していこうということであります。一定の日本語能力があれば、制度を利用できる年齢の上限を引き上げる。更に高い日本語能力等の要件を満たす方については、本制度の活用後に在留資格を「特定活動」から「定住者」に変更できるようにするなどの内容です。
長野刑務所で虐待事案があったとの報道に関する質疑について
【記者】
長野刑務所での虐待事案についてお尋ねします。先日、NPO法人監獄人権センターが、今年6月に長野刑務所で身体障害などがある受刑者に早く歩くよう怒鳴りつけたり、昼食を与えなかったりする行為があったと明らかにしています。当時は、名古屋刑務所での暴行事案が大きな問題となっており、法務省でも第三者委員会が再発防止策をまとめている時期での発生となりましたが、大臣として、今回の事案をどう受け止めているのでしょうか。また、今回の事案では、別の受刑者が外部に手紙で問題を知らせようとしたところ、刑務所側に妨害を受けたとの指摘もありますが、この点についても受け止めを伺います。併せて、刑事施設でのこうした人権侵害の防止のため、改めて現場でどのような対策が必要か、大臣御自身のお考えをお尋ねします。
【大臣】
監獄人権センターから、長野刑務所において本年6月に障害のある受刑者に虐待が行われた、暴言を吐いた、昼食を出さなかった、そういう行為が行われ、また、別の受刑者がこのことを外部に手紙で知らせようとした際に妨害されたということが指摘され、矯正局に対し速やかな調査等の実施を求める旨の申入れがありました。
まず、事実関係をしっかりと把握して、しっかりと対応していかなければならないというふうに思っております。今、まさにその事実関係を調査しているところでありますので、この案件に今ここで深く入るわけにいきませんけれど、6月というのは確かに御指摘の名古屋刑務所での暴行事案等を踏まえて取組を進めている途中の時期でありますので、これが事実だとすると、反省し、いかしていかなければならない、そういう案件だと思います。ただ、事実関係をまずしっかり把握したいというのが前提です。
その上で、法務省が全国の刑事施設において、人権の侵害を防止するため、こういったことが再発しないように防止するための施策を第三者委員会の知恵をお借りして、提言という形で全国の刑務所にやってもらうべきことということで、アクションプランというものを設けているわけであります。三つの視点から、このアクションプランは構成されています。再発防止、早期発見、組織風土の変革。この3区分に基づいて68の具体的な取組が整理されています。これを全国の(刑事)施設でやろうということで、まさに取り組んでいるところでありまして、10月末現在で68に対して(約)80パーセントの項目が、具体案の調整・実施段階に入っているということで、実施されているものが全てではないですけれども、具体的なところにもう今、作業が進みつつあるという実態であります。これを何とか早く、また完全な形で実施していくということが非常に重要なことだと思います。
いくつか典型的なものだけ例示を申し上げますけれど、「早期発見」の場合、ウェアラブルカメラ。担当刑務官がカメラを着けて対応しているのを別の部屋で別の職員がウォッチできる、フォローできるということを始めています。来年度予算要求に、まさにこれを織り込んでいます。今日、政府原案が決定されますけれども、そこに入れて、是非全国でやろうということです。また、組織風土の改善については、不適切な呼び名。これはもう6月に指示済みでありますけれども、受刑者の人が刑務官を先生と呼んだり、不自然なそういう呼び名が見受けられる。こういうものを全部排除していこうと。やっぱり、ゆがんだ言葉はゆがんだ意識につながっていきます。言葉をしっかり正していこうということも、国会審議でも指摘されましたし、全国ベースでしっかりやっていこうということもやっています。あと、マネジメントを意識した管理職研修。こういったものも、やっています。また、非常に業務がどんどん増えていく中で、業務の効率化も必要だろうと。刑務官の負担を軽減するための合理化。細かい報告の集約化、廃止。そういったものも今、進めているところであります。今回の事案をしっかり調査した上で、こうしたアクションプランが本当に実行できるように、もう一回気持ちを引き締め直して法務省としては取り組んでいきたいというふうに思います。まずは、しっかり急いで実態調査をしたいと思っています。
日系四世受入れ制度の見直しに関する質疑について
【記者】
先ほどの日系四世の受入れ制度ですけれども、改めて制度のねらいと、今回の見直しへの期待についてお聞かせください。あと、冒頭にもありましたが、運用開始は12月28日から実施ということでよいのでしょうか。
【大臣】
まず、日系四世の方々については、自分のおじいちゃん、おばあちゃん、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんがいた、自分のルーツの国に行きたいという、そんな思いから発したこの制度、この仕組みが作られたわけですよね。5年間滞在していただいて、日本文化等への理解、あるいは日本語能力を高めていただいて、両国のそれぞれの国と日本国の架け橋になってもらえればと、そういう思いでこの制度を作りました。必ずしも十分に活用されているとはいえないので、できるだけ条件を緩和して、もっと使ってもらえるように、もっと来ていただけるようにしようという期待を込めての条件改定であります。関係する全部の措置は、早ければ12月28日から施行されます。そういうふうに御理解いただきたい。
危険運転致死傷罪に関する質疑について
【記者】
危険運転致死傷罪をめぐる問題についてお伺いします。自民党が一昨日20日に見直しを求める提言を政府に提出しました。岸田首相は、提言をしっかり受け止め、法務省に直ちに検討を開始させるとの考えを示しています。大分県でも194キロの(速さで走行していた)車が起こした悲惨な事故が、危険運転の問題というのをクローズアップされるきっかけになっています。改めて、小泉大臣に自民党の提言をどのように受け止めたかという点と、法務省として今後どのような形で、どのような点の検討を進めていくのかということをお伺いします。
【大臣】
御提言は先般、自民党のプロジェクトチームの方々から直接受け取りました。また、そこで意見交換もさせていただきましたし、御遺族の方も3人みえまして、遺影を見せていただいて、御遺族の方のお話もしっかりと受け止めました。非常に深刻な、また重要な問題だというふうに受け止めています。総理の御意思も踏まえて、十分検討して、対応して、しっかり取り組んでいく、そういう気持ちでおります。自動車運転死傷処罰法を所管する法務省としても全力で対応したいというふうに思っています。
ベトナムにおける特定技能試験に関する質疑について
【記者】
先週土曜日、ベトナム政府主催の人材協力フォーラムが行われました。大臣は、ベトナムで特定技能の試験の実施に向けて準備されていると表明されましたけれども、実施時期ですとか、それから分野ですとか、そこらへんが固まっていましたらお答えいただきたいのと、併せて期待もお答えいただけたら有り難いです。
【大臣】
御指摘のように、介護分野と農業分野について、令和6年3月中にベトナムでの特定技能試験を実施するべく、関係省庁と今連携しているところであります。もう1点、日本語試験及び自動車整備分野については、令和6年5月以降の実施を予定しています。介護分野、農業分野は令和6年3月中。日本語試験及び自動車整備分野が、令和6年5月以降。過去に建設分野について、令和3年3月に試験を実施したという先例はあります。それを踏まえて、介護、農業、日本語、自動車整備については、ベトナム現地で特定技能試験をやっていこうと。強い要望がありますので、実施したいと思っています。
野党議員の発言に関する質疑について
【記者】
立憲民主党の泉代表が、裏金が指摘される派閥の中で飯を食ってきた、そういう人物が法務大臣を務めているのはいかがなものかということで更迭を求めておりますけれども、大臣は既に、与えられた職責を果たしていきたいという意思も表明されております。それはそれとして、野党がこういう裏金が指摘されている派閥の中で飯を食ってきたという言い方をしていることについて、どのように受け止めているのか、感じているのか、というのを、大臣の言葉で教えていただければと思います。
【大臣】
捜査機関の活動内容に関わる事柄については、法務大臣としてお答えすることは差し控えたいと思います。その上で申し上げれば、検察当局も含めて法務行政というのは常に、厳正公平、不偏不党の立場から法令に基づいて必要に応じ証拠に基づいて適正に執行しているわけでありまして、私もその一員でありますから、同じ考えがあり、同じ取組をしているところであります。その上で更に申し上げれば、国民の誤解を招くことがないよう、政策集団、所属していた志帥会は脱会しました。そういう状況です。しっかり職責を果たして、この法務行政全般の厳正公平、不偏不党、これを貫いていきたい。その職責を全うしたい。そういうふうに思っています。
韓国大法院の判決に関する質疑について
【記者】
戦時中、日本に徴用工や女子勤労挺身隊として強制動員された韓国人やその御遺族が日本企業を訴えた損害賠償の裁判で、21日に韓国大法院が高裁判決を維持した形で原告の勝訴が確定しました。これは2018年の韓国大法院判決に続く確定判決なわけですが、日本の裁判所でも1990年代から多くの戦没者問題が全国各地で提訴され、原告敗訴が続きましたけれど、被告企業と原告の間で和解が成立したケースや、強制動員の実態が事実認定された裁判もいくつもありました。その後韓国のほうに裁判が移ったんですけれども、日本政府はずっと1965年の日韓請求権協定で最終的には解決済みだという強弁を続けてきました。しかし、個人請求権が消滅していないということは日本政府も認めていますし、法務省も日本企業に強制動員されて賃金未払いの状態で帰宅した民間の徴用工が17万人以上いることですとか、それから供託金の記録に基づいた未払い賃金の記録についても調査報告を2010年に公表しています。少なくとも加害企業と、企業の間で和解に向けて協議する機会を設けたり、韓国政府傘下での諸財団が拠出する第三者弁済、日本の加害企業も参加して被害者に正式に謝罪することを日本政府が妨害するようなことがあってはならないと思うんですが、それに法務省も関わった問題で、情報提供しているということもありますし、植民地政策や戦争被害ですね、人権救済のための国際人権法もこの30年の間発展したわけですけれども、こういった状況の中で、日本政府がかたくなな姿勢を取ることについて、どのように大臣が考えていらっしゃるか、外国人労働者の人権や企業の人権のコンプライアンスなんかも切り離せない問題だと思うので、是非大臣の御所見をお願いします。
【大臣】
昨日、韓国大法院が、三菱重工及び日本製鉄に対する2件の訴訟について、損害賠償の支払い等を命じる判決を確定させたことは、報道を通じて承知しています。今のお尋ねでありますけれども、韓国大法院判決を受けて、我が国の対応に関するお尋ねでありますので、これは所管外です。法務大臣としてお答えは差し控えたいと思います。
(以上)
出典:法務省 Webサイト
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00473.html