法務省|法務大臣閣議後記者会見の概要【令和6年3月15日(金)】
今朝の閣議ですが、法務省案件として、3件の法律案が閣議決定されました。出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案、出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案、事業性融資の推進等に関する法律案の三つについて閣議決定が行われました。
まず、報告の1件目は、今申し上げた三つの法律案の中の二つです。出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案は、在留カードとマイナンバーカードの一体化に関する法律案であります。両者を一体化することで利便性を格段に向上させることができるということで、外国人の(生活の)利便性に資するとともに、行政運営の効率化を図ろうという考え方です。出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案は、新たな在留資格として「育成就労」の在留資格を創設して、技能実習法を抜本的に改正する等の内容です。日本が働き先として選ばれる国になるという観点から、外国人が就労しながらキャリアアップを図っていく分かりやすい制度にしようということと、大事なポイントは、人権侵害の防止等を図るということも重要な要素であります。こうした分野での取組によって、外国人材に長く日本で働いていただいて、スキルアップをしていく。そういうことを目指した法案として閣議決定されました。人権を尊重する、共生社会を実現するというために非常に重要な法案であるというふうに考えております。
報告の2件目は、「外国人支援コーディネーターの養成の在り方等に関する検討会」が、本日報告書を公表します。この外国人支援コーディネーターというのは、全国の自治体とか、国の外国人の方々が来られる窓口で様々なアドバイスをする、適切な行政機関を紹介する、そういうことを行っていますけれども、それぞれ専門知識がやはり必要になってきており、全国統一的な扱いも必要であります。また情報の共有も必要だということで、令和8年度までには、目標としては300人のコーディネーターを養成したいということです。これから受講生の募集、カリキュラム、そういったものを整備して、新年度の来月から具体的な取組をしていこうということになります。
3件目の報告事項は、札幌刑務所におけるモデル事業であります。拘禁刑の導入がもう来年ですから、それをにらんで、北海道内所在の刑事施設から精神障害を持たれている受刑者20名程度を集め、ユニット処遇というふうに呼ばれるものでありますけれども、医師、保健医療・福祉関係の外部の専門機関、そういった方々がチームを組んで、多職種・多機関連携によるチーム処遇をしていこうというモデル事業を実施します。今日、矯正局から通知を発出して、対象者の選定等を実施していきます。
御報告の4件目は、「人権教育・啓発に関する基本計画」です。政府では、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づいて基本計画を定め、各種取組を行っているところでありますけれども、今般、公益財団法人人権教育啓発推進センターから調査研究委託をしました有識者検討会から報告書が出されまして、この基本計画の見直しを行うべきだという御提言をいただきました。これを踏まえて法務省では、昨日、関係省庁とも協議の上、基本計画の見直しに向けた検討を開始することとしました。具体的な見直しの方法等を検討していきたいと思っております。
育成就労制度に関する質疑について
【記者】
外国人労働者の育成と人材確保を目的とする育成就労制度を盛り込んだ関連法案が閣議決定されました。改めて、従来の技能実習制度にどのような課題があって、今回の改正法案によってどのような改善が図られるのか、お考えをお聞かせください。
【大臣】
育成就労の創設についての考え方でありますが、これまでは国際貢献という目標の中で、外国人の労働者を受け入れ、スキルアップしていただいて、また彼らは母国に戻って母国のために貢献するという考え方がありましたが、我が国も人材不足や人口減少の中で、より長くいてもらいたい、高度なスキルを持って日本で貢献してもらいたいという要請が大変強くなってまいりましたので、改めて目的というものを、日本における労働者の健全な育成とそれによる我が国への貢献を期待しての取扱いをしよう、こういうふうに考え方を変えまして、もう一度制度を整備しようということになりました。その結果、当然ですが、特定技能制度と技能実習制度にずれがあったわけですよね。特定技能のほうは、明らかに人材確保ということで仕組まれた制度です。こちら(技能実習制度)は国際貢献でしたけれども、目標を合わせることによって、制度の整合性も図っていく必要があるということになりました。人材育成と人材確保という観点から、特定技能と従来の技能実習の整合性をとる。そしてその中で、働く方々の労働者性というものをより強く広く認めていこうという考え方も取り入れました。転籍の制限、これを自由意志に基づく転籍を認めていく、やむを得ない事情による転籍についても明確化する、範囲をしっかりと特定していく。そういう取組をすることによって、結果としてより長く日本に滞在していただいて、スキルアップをしていただいて、共生社会の実現に貢献していただきたい。そういう思いを持って、今回の法律案を企画し、立案したところであります。
【記者】
地方の人材確保に関しては、転籍制限以外の政策や施策が十分でないという声もあるんですが、そういった方面を充実するお考えはないのでしょうか。それから、施行が約3年後ということになるんですけれども、その点についてもお聞かせください。
【大臣】
3年後(の部分の質問の趣旨)は、もっと早めるべきだということですか。
【記者】
早めるべきだということです。
【大臣】
まずそちらの問題から申し上げますと、非常にたくさんの業界が関わっていて、法律を動かすだけではなくて、運用の部分がかなり大きなウエイトを占める可能性もあると思うんですよね。そういったときに関わる方が大変多くいらっしゃることになると思います。そういう方々の理解、また運用、規定の効果。そういったものも検証する必要がありますので、急ぎたいです。それは選ばれる国になるためには、早く措置はしたいんですけれども、初めての試みの部分がいくつもありますので、拙速にならないように速やかに、でも丁寧に進める必要があると思います。3年が長いか短いかというのは議論があるところですけれども、できるだけ早く、でも丁寧にやりたいという思いです。
地方の扱いも同じです。やっぱりやってみて、これはちょっと地方に厳しいなと、そういうものが出てくれば変えなければいけないし、また我々もそれを早くウォッチしなければいけませんので、毎回申し上げているのですけれども、完璧な制度というのを机上で、ペーパーの上で作り上げることはできたとしても、それを現実に置いてみたときに何が起こるかが、置いてみないと最終的には全部分からないところがあるので、そういう姿勢をしっかり持ちながら、地方への影響もやっぱりしっかりと注視していきたいし、また、必要があれば将来に向けて、制度、仕組み、運用の変化・変更というものも視野には置かなければいけないと思います。
同性婚に関する質疑について
【記者】
同性婚を認めていない民法の規定が憲法に違反するかが各地で問われた訴訟のうち、昨日2件の違憲とする判決がありました。違憲性に関する一審の司法判断というのは分かれていますが、大臣は、今後の議論においてどのような点が論点になり得るとお考えでしょうか、お聞かせください。
【大臣】
同性婚制度について御指摘のような裁判所の判決がなされました。これまで地方裁判所で6件、高裁において1件、計7件の判決がなされました。ただ、最終の確定判決ではありませんので、基本的にはこうした判決をしっかりとつぶさに我々も注視をして、中身を理解していかなければいけないと思います。様々な判決の中にも様々な結論の違いもあり、またその理由についても判断が分かれているところもありますので、よく中身について我々も、今申し上げましたように注視をし、また理解していくという取組をしたいというふうに思っています。ただ、この問題はやはり国民生活の基本に関わる問題であり、また多くの国民一人一人の家族観にも関わる問題であり、したがって国民に幅広く影響が及ぶ、そういう問題だと思いますので、基本的には国民的なコンセンサスと理解、そういったものが求められるのだというふうに考えております。でもそのためには、国民が理解するためには、国民各層の意見、国会における議論あるいはこうした司法の判決、こういったものの動向、また自治体におけるパートナーシップ制度の導入や運用の状況、そういったものを幅広く国民にも見ていただき、経験していただき、議論していただく。そのために我々も、またその議論を促進するという意味では貢献できるところがあると思います。そういうスタンスでこの問題に注視していきたいというふうに思っております。
(以上)
出典:法務省 Webサイト
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00495.html
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