法務省|大臣就任に当たっての小泉法務大臣訓示


大臣就任に当たっての小泉法務大臣訓示の様子

令和5年9月14日(木)

 皆様こんにちは。大変お忙しい業務の手を止めていただいて、お集まりいただきました。大変恐縮なことでございます。昨日、御縁がありまして、皆様方と一緒に仕事をさせていただく法務大臣の職を拝命いたしました。これから、率直な意思疎通をしながら、一緒に共通の目標に向かって、一緒に頑張らせていただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いを、まず申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
 今、日本の社会をめぐる様々な問題、また、様々な議論、経済の問題、社会の問題、様々な家族の問題、色々ありますけれども、私、ずっと考えてみて、国民が究極的に求めているもの、色々な総括の仕方はあると思いますけれど、やっぱり公平で公正な社会、これに収斂されていくんだろうと思うんですね。非常に社会が複雑化してきている。所得分配も乱れてきている。そして、国際的な影響が様々及んでくる。格差が広がる。こういう状況の中で、国民の不安、不満、希望、そういったものを絞り込んでいくと、やはり最後は公平で公正な社会を実現するということが我々に求められている使命ではないかなというふうに、強く感ずるところがございます。理不尽な目に遭う方がいっぱいいるわけですよ。努力しても報われない方も大勢いるわけですよ。そういう中で、公平であれば、公正であれば、その結果我慢できるかもしれません。でも、思い通りにいかないことがほとんどじゃないですか、人生はね。だけど、何とか頑張って踏ん張れるのは、公平・公正だから頑張れるわけですよ。国民もきっとそれを望んでいると、私は拙い政治生活の中で感じてくる部分がありました。じゃあそれを誰が担保するんだ、誰がそれを引き受けるんだというふうに考えていきますと、もちろん全ての行政分野が関わっていますよね。厚生労働省も関わっている。財務省も関わっている。全部関わっている。だけど、それを突き詰めていくと、基本法制を作って、基本法制を運用して、基本法制をまた改変していく、その力と権限と知恵を持った法務省ですよ。この、公平で公正な社会の実現という非常に抽象的で難しい、だけど非常に重たいこの大命題を正面から担っていくのが法務省の使命だと私は思います。こういう言い方は本当に申し訳なく思いますけれども、是非皆さんもそういう気持ちを共有してもらえれば有り難いなと思うんですね。そして結果を良い方向に導く経済政策や社会政策はいっぱいあるわけですよ。でも、うまくいかなかったときでも、みんなが、自分の人生が納得できるような社会を作っていきたい。そんなふうに思います。もう既にやってきていただいていることですよ。それを遠くから眺めると、日本という社会をもうちょっと引いて眺めると、一つの建築物として眺めてみると、こういうふうに思うんですよね。上物の色々な政策があります。色々な経済官庁、色々な官庁があって、色々な政策をやっています。制度があります。それは上物ですよね。法務省が担当している基本法制、公平・公正、そういうまさに基本法制は地下構造なんですね。基礎なんですね。見えないんですね。だから、非常に重要なんだけれども見えない。その御苦労があると思います。そして、その上に上物があるんですが、ここが時代の波と風を強力に受け始めているわけです。国際的な風、プレッシャー、要望、そういったものも批判も入ってくるし、気が付くところ、上物には、外国人が住んでいたりするわけじゃないですか。そうすると、待てよと。じゃあ上物だけ直せば済むのかというと、内閣として、国家として上物だけ関係省庁に頼めば良いのかというと、そうはいかない。いよいよ基礎の部分を見直していかなければいけない。そういう時代にも入っていますよね。我が法務省も、まさにそこへ入ってきている。基本法制の見直しが頻繁に行われるようになってきましたよね。今まで長く懸案だったものに、難しいけどやっていこう。そういう場を設けて進もうとしておられますよね。それが、非常に重要な、私は今この時点で大事なことだと。ただ、そこで見失ってはいけないのは、よく我々は、行政は、政治もそうですけれど、変化に対応するということをもって良しとするところがあるんですよ。変化にスピード感を持って対応する。それは大事なことなんですよ。それでは何のためにと。何のために変化に対応するんだと、もう一歩突っ込まないと。「変化がありました」、「対応します」、「変化がありました」では済まない。それでは受け身ではないですか。受け身も大事なんですけれど、変化を乗り越えたときに、より国民を守れる。よりきめ細かく、弱い国民を、変化に翻弄される国民を、より的確に守れるというものを実現するために、変化に対応するんですよね。そこも是非一緒に、理屈っぽいことを言いますけれども、共有してもらえれば有り難いなと、そういうふうに思うところでございます。
 この公平で公正な社会、そして国民を守れる、そういう法務行政、変化に対応する法務行政、そういったことを踏まえて、総理から昨日、7点の法務行政の課題について御指示がございました。立っていただいているので、短くします。うんと短くしますけれども。一つ、「身近で頼りがいのある司法の実現のための司法制度改革」。2番目、「個別法によるきめ細かな人権救済の推進」。人権救済の累積というふうに私は思っていますけれども、きめ細かくたくさん積み上げていくことで、漏れなく実効的に手当ができる。対極にまた違う考え方もあるかもしれませんが、これが我々の方針だというふうに総理からも指示を頂きました。3番目、「関係大臣と協力した刑務所等出所者の再犯防止や犯罪被害者の支援等」。4番目、「領土等の警戒監視について、関係大臣と緊密に連携した情報収集等」。5番目、「一定の専門性等を有する外国人材の円滑な受入れ、在留管理の徹底、技能実習制度と特定技能制度の見直しなど」。6番目、「観光立国に相応しい入国管理、改正入管法に基づく取組や支援」。そして7番目、「旧統一教会問題への適切な対処」。法テラスみたいなものを含めてですね。こういう指示を頂きました。これは皆さんもプロですから、全部「うん、そうだ。」と御理解いただくんですけど、そこに通す理念ですよね。理念。公平で公正な社会を作り、弱い国民をできるだけ一生懸命守る。そういう気持ちで、この七つの課題に一緒に取り組んでいきましょう。是非お願いしたいと思います。そのときに、私が先頭に立ちますけれど、いつも先頭にいますけれど、でも一人ではできることには限界がありますから。是非皆さんの能力とやる気を、もう随分出ていますけれど、もっと出していただくことが必要かなと。本当に色々考えてみて思うんですよ。やはり私も霞が関で仕事をしてきたから思うのですが、本当、とてつもない能力を霞が関は持っていますよ。だからもう政治が追いつけないものは私はあるなと思っているので、それをギュッと出していただくためには、適切な勤務体制を逸脱してはいけない。疲労困憊して良い政策は生まれません。やっぱり自分が幸せであり健康であること。家族との時間を持てること。そういったワークライフバランスの中でベストの生産性が出てくると。政策生産性。本当に効果のある政策を出せる力、そういったものを霞が関全体でやらなきゃいけない政治の責任なんですけれども。少なくとも我が省はそれをやりましょうよ。勤務に無駄があれば、それは省いていきましょう。私もなるべく迷惑を掛けないようにしますから、皆さん方の貴重な能力と時間を国民のために使えるように、是非工夫しながら、また(事務)次官とも、官房長とも知恵を出し合いながら、みんなが幸せに、皆さんがまず生き生きとしてもらうことがとても大事だと思っております。
 もう足もお疲れでしょうから、最後の余談に入りますけれども、(法務省)赤れんが棟のれんがは、深谷で作っているんですよ。渋沢栄一翁が、深谷に(日本)煉瓦製造株式会社というものを作って2000年過ぎに解散するまで、あそこでずっとれんがを作っていたんですよね。何で渋沢栄一が、深谷が自分のふるさとだから作ったんだけど、何でれんがを作り始めたかというと、そのれんがが司法省(法務省)にあるわけですけれど、明治4年に新帝都建設のために、明治政府がドイツ人建築家を二人招請したんです。彼らが言ったのが、良い首都を作るには良質なれんがと、そしてそれを作る工場が必要だということを上申しました。時の政府は渋沢栄一に頼んだんです。そういう会社を起こしてくれ、そういうれんがを作ってくれと言って、彼は地元にそれを作りました。さて、この貴重なれんがの配分先です。重要なところから配分されていったわけですよ。戦略的に。最後に司法省が出てきますけれど、まず東京駅、れんがの東京駅。あれは日本の交通インフラの起点じゃないですか。そこから日本全国に鉄道ネットワークが広がっていく。そこにれんがを使って作りました。それから少し東京駅から歩いて行くと、日銀が見えてきますね。日銀の旧庁舎。あそこにれんがを使いました。経済システムの起点です。貨幣経済の起点です。そこに入れました。それから、歩いてしばらくずっと行くと、神田から上がっていくと、本郷、東京大学に入れました。それが教育の起点です。国家戦略。そしていよいよ司法省の番です。ここの赤れんが棟に深谷のれんがが入ってきた。ここから始まる。そしてここは(東京都千代田区霞が関)1-1-1ですよね。日本という近代国家が何を重視していたか、もう歴然としていますよね。公平・公正な社会ですよ。それを作るためにこのれんがを大事なところに配分してここに持ってきた。たまたま偶然私も深谷から来ましたけれども、皆さんと一緒に仕事をする御縁だなと。心強く思うところでございます。そういう意味で、共に励まし合いながら、大きな目標に向かって、お互い心を開いて、同志として、力を尽くしていきたいと思います。力を貸してください。また、大きな力を発揮してください。心より感謝申し上げ、お願いを申し上げる次第です。よろしくどうぞお願いします。ありがとうございました。

(以上)



出典:法務省 Webサイト
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00946.html

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